洋上　朝　夕　夜

ギリシャ船籍のクルーズ船「シー・ダイヤモンド」が、先日沈没しました。今、全世界にはクルーズ船が２２０隻以上あるそうです。大型ライナーの時代を迎えて、何かの警鐘と受け止めるべきでしょうね。

洋上を航海して、甲板で日光浴をしていますと、読書量が進みます。『太陽にロウソクはいらない』と言った人がいます。その通りです。３日間は島に着かないと思えば、過ごし方が違ってきます。甲板は、そのままサン・パーラー。サン・ルームは和製英語ではないと思いますが、それに近いのでは。特に、読書しては、水平線をながめ、また読書。その間に、アイスクリームを食べたり、風に吹かれてビールを飲んだり、そして甲板でウォーキングしたり。

『太陽の当たる場所にいたいと思うなら,火膨れが少々できても我慢することだ』と言ったのは、米国のコラムニスト、アビゲイル・バン・ビューレン(1918-)でした。その通りにしました。顔、膝、腕、肩は、醜く焼けました。私の顔の厚い皮も剥けました。『日陰で日時計が何の役に立とうか,才能は隠すな』という名言もありました。でも時々は、ひたすら日陰を求めて、甲板を移動したこともあります。

『日は昇り沈む』『日はまた沈む』『こんな日もあるさ』数々の先人の、太陽に関する言葉を思い出しました。そして、朝夕の太陽の輝きを眺めては、原始の時代は太陽をどう思っていたのだろうかと考えました。

『日暮れて道遠し』という言葉。しかし、久しぶりのクルージングでわかったのは、日が暮れた後の楽しみは、夕焼け。星雲の美しさでした。約2万8千光年もある天の川銀河も存分楽しめました。そして、半月も。『日暮れて道遠し』も、また楽しからずやです。いかに、地球上の人口光が邪魔をしているかを、いやというほど知りました。

『太陽が照れば、塵も輝く』と言ったのは、ゲーテ。『元始、女性は実に太陽であった。真心の人であった。今、女性は月である。他によって生き、他の光によって輝き、病人のような蒼白い顔の月である』と言ったのは平塚雷鳥さん。もし今に生きておられたら、即刻、お考えを改めてお詫びのコメントをだされたのでは。今の時代、女性はそれほどやわでありません。

地球から太陽までの平均距離は約1億5000万kmです。正確には、地球から太陽までの平均距離の正確な値は1億4959万7870kmで、これを1天文単位（AU）としてきました。

では、われわれが見る水平線までの距離をご存じでしょうか。わずか５キロもないのです。地平線も同じだと思います。遠い太陽までの距離に思いを馳せながら、光と陰が織りなす風景、漆黒の闇に浮かぶ半月、朝と夕と夜の洋上シーンを、ご覧頂ければ幸いです。

 

 (2007.04.08　シドニー・ボーイ　記）